レバレッジドローンとCLOの動きは要注意、サブプライムローンの再来か?

何事もいつかは終わりが来る

これは相場に限らず何事についても言えることです。大昔からこのことは認知されていました。誰でも必ず習ったはずの『平家物語』の冒頭の文章にもこのことが記されています。

祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者もついにはほろびぬ、ひとえに風の前の塵に同じ。

絶好調かと思える現在の景況感の中で、経済状況について平家物語の冒頭のように考える人はどうやらまだまだ少数のようです。しかし、世界各国の株式市場は2018年に変調を来しました。株式市場は平家物語的な思考の持ち主なのかもしれません。株価は半年から一年先を読んで動く生き物と言われています。変調を来した相場環境を尻目に、2018年のほぼ年間を通じてアナリストと言われる職種の人達は強気姿勢を崩さない傾向にありました。しかし相場が崩れたということは、アナリストの強気とは対照的に、実際の資金運用者は弱気な見通しを持ったということを意味しています。

コラム:最悪のタイミングで貿易減速、世界経済と市場の脅威に
世界中で貿易の減速を示す兆候が増えており、来年の世界経済と金融市場にとって脅威となりそうだ。貿易は10年前の世界金融危機以来で最も低調で、一部の指標は数十年来の…

そもそもアナリストの言うことをそのまま鵜呑みにすることはできるのか、残念ながらアナリストという職業の人達は、自身で資金を運用することはありません。なので、アナリストとは実戦経験がないにもかかわらず実戦上の動きを予測しようとする人達なのです。そんなことが可能なのでしょうか。誰でも疑問が湧きます。そのアナリストが叩き出した数字がEPS(とPER)となります。日本株、日経225のEPSは2018円12月25日時点で1790前後です。しかしPERという尺度で見たときの日本株価の低迷位ぶりは世界の市場の中でも群を抜いています。このことは、アナリスト目線の企業業績の予測が的外れなものである可能性を示唆しています。そもそも株式市場でPERほどあてにならないものはない、と言われています。

世界の株式市場で2018年暮れの下落がかなり激しくなった

今2018年を振り返ってみて、2018年に株式相場環境はかなり悪化したことがよくわかります。1月に一度高値を形成し、これで天井かと思わせておいて3ヶ月くらい調整した後、また株価は上昇しました。そして2018年の10月に高値をつけることとなりました。下落が著しくなった原因についてはいろいろ言われていますが、もちろんどれも当たっているような当たっていないような、です。ちまたで言われている市場の懸念材料は、

  1. 米中貿易摩擦、中国経済の原則
  2. パウエルFRB議長の解任騒動、アメリカ議会閉鎖など、アメリカ政治の混迷
  3. FRBによる金利引き上げと、景気循環への懸念
  4. 2018年10月に上がり過ぎた米株市場

といったところでしょうか。しかしここへ来てさらに厄介そうなものが浮上しつつあります。それはレバレッジドローンとCLOです。

レバレッジドローンとCLO

2018年10月以降、世界各国の株式市場の弱さが際立ってきました。巷でささやかれる原因は、米中貿易摩擦による中国経済の減速とも、トランプ政権の強引な政策のせいとも言われています。その一方で、米金利のフラット化や逆イールド化なども景気減速や後退のサインだとして、そのせいで株式市場が動揺したとも言われます。しかし、中間選挙を通過してトランプ政権のご都合主義に追随したトランプラリーが終わったと見るのが本筋でしょう。そしてその陰でレバレッジドローン市場も変調をきたしています。下のチャートはレバレッジドローンではありませんが、ジャンク債といわれるハイイールド社債のETFのチャートです。

iShares iBoxx $ High Yield Corp Bd ETF (HYG) チャート


レバレッジドローンとは

レバレッジドローンとは、バンクローンの中でも複数の金融機関が協調して実施するローン(シンジケートローン)のことで、さらにその中でも信用度の低いものの寄せ集めということになります。

バンクローン市場とは?
バンクローンとは 2013年頃からバンクローンに投資するファンド「ローンファンド」「バンクローンファンド」の設…

金融緩和により低金利に抑えられた上に流動性供給によりだぶついたお金がこういった金融商品に流れた可能性が指摘されています。しかも、邦銀がかなりの参入度合を示していると聞いています。レバレッジドローンは一般人(機関投資家ではないという意味で)にとっては取引不可能なものですが、これを束ねるローン担保証券(CLO : Collateralized Loan Obligation)という存在が話をやっかいなものにしています。そして、CLO化されたものは投信などを通じて一般人も参入可能な金融商品です。こうして、ハイリスクな金融商品が全世界にばら撒かれてしまいました。これはまさにサブプライムローンと同じ構造です。大槻奈那氏もレバレッジドローンとCLOについて見解を述べています。

邦銀が「次の金融危機」の引き金を引くのか | 大槻奈那先生、金融の修羅をゆく
10月25日に、初めて民間企業が発行する債券の利回りで「0%」が登場した。発行体の日本政策金融公庫は政府保有ではあるものの、国債・政府保証債以外でゼロ利回りの債券発行はこれまでなかった。にもかかわらず、…

大槻奈那氏が言うようにリスクは世界中にばら撒かれました。レバレッジドローンはこのままサブプライムローンのような相場の崩壊を招く事態に発展するのでしょうか。それは誰にもわかりません。しかし構造的に危ういものがサブプライムローンと同じような手口でばら撒かれてしまいました。そして米国は金利が上昇していく地域です。歴史は繰り返す可能性があります。各国の大規模金融緩和がそれに拍車をかけました。

CLOの原資産のレバレッジドローンが弱くなり、それの弱さがCLOにも波及

ここ数か月レバレッジドローンの弱さが顕著になりました。原因は利上げの回数を減らすといったFRBの姿勢にもあると言われていますが、正確なメカニズムは分かりません。しかし、事実としてレバレッジドローンは弱含んでいます。

クレジット市場の売り、遂にCLOにも波及-スプレッド拡大
企業向け融資をパッケージしたローン担保証券(CLO)は今年最もホットな商品の一つだったが、ここへ来て冷め始めた。

レバレッジドローンについては、邦銀が相当手を付けているとの報道もあります。もしかすると邦銀の多くが将来不良債権を多く抱えることになりかねない状況になりました。1990年代に発生した本邦金融機関の不良債権問題が復活する可能性は徐々に高まりつつあると言えそうです。1990年代の不良債権はバブル時代に高騰した土地を担保に甘い融資を繰り返した結果、バブル崩壊後に回収不可能になった債権が出てしまったことが原因です。そして今回は土地ではなく、レバレッジドローンです。2007年~2008年に世界中で大問題になったサブプライムローンとよく似ています。

1兆ドル規模の米レバレッジドローン、市場の運命握る日本の銀行
日本の銀行は高債務の米企業向けローン債権の3分の1相当を購入し、同市場の規模が1兆ドル(約113兆4000億円)を超えるのを後押しした可能性がある。UBSグループの新たな推計が示唆した。
レバレッジドローン、約3年で最大のディスカウントで販売
レバレッジドローンは流通市場での価格が下落している。ファンドからの資金流出やセンチメント悪化が響いている。新規に組成されるローンも2016年2月以来の大幅なディスカウントで販売されている。ブルームバーグのデータが示した。

もちろん、だからと言ってすぐに何かが崩壊するということでもなく、じわじわと蝕まれていく債権がいつか引き金となり邦銀の倒産などが発生したら要注意となります。レバレッジドローンとCLOの動向は今後目を離せないものとなりました。現在の株式市場の弱さを単にトランプ政権のドタバタだけに理由を求めたとしたら痛い目に会うかもしれません。裏に隠れた本質的な問題にも目を向ける必要があります。

債権バブル崩壊が招くもの

こちらの記事は、債権バブルの崩壊を長期の歴史サイクルと関連付けて考察しているもので、興味深いものです。この記事中に登場するレイ・ダリオ氏(世界最大級のヘッジファンドであるブリッジウォーター創設者)は現在の債権バブル崩壊が1930年代と似ていると述べています。1930年代と言えば世界恐慌の真っ只中です。1929年10月のダウ平均の暴落が世界恐慌での象徴的な出来事です。

日米を襲う「債券バブル崩壊」の恐ろしい結末 | 市場観測
筆者は2018年、アメリカの中間選挙前後から「『トランプ勝利』でも株の反発は長続きしない」(10月31日配信)など、6本の記事を配信してきた。その中で「金利上昇の理由がインフレか財政赤字拡大かで、下落相場への…

もちろん、類似性があるからと言って必ずまた世界恐慌が来るなどとは言えません。1930年代のアメリカや世界の経済の流れはご存じのとおりで、その後世界は世界大戦へと向かっていくことになります。世界各国で右向きの指導者が勢力を伸ばしているのも気になる点です。1930年代の恐慌時代にイギリスとフランスが取ったブロック経済という政策は自国と植民地をブロック化し、その中での関税は低く押さえて、第三国に対して高い関税を課すというものでした。

ブロック経済からはじき出された国ではファシズムが台頭し、そして世界大戦へと突入していきます。いかがでしょう?今現在との類似性を感じませんか?戦争など起きてほしくはありませんし、ああいう過ちを繰り返すほど人類はばかではないとは思います。しかし、トランプ政権の関税政策や財政出動などは当時と類似性の高いものです。実弾戦争でなくても何らかの戦争を生む可能性は十分にあります。

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